○歯のコラム 2018年5月
ホントに怖い!大人のむし歯【根面う蝕】
●歯の根面のむし歯、増えてます。
歯肉(歯ぐき)が下がると、歯の根が露出します。見かけも気になるところですが、それ以上に問題なのが、歯の根の表面(根面)はとてもむし歯になりやすいということ。「根面う蝕」(根面のむし歯)と呼ばれ、特に高齢の方に増えています。歯の根元周りにむし歯が進行すると、歯の噛むところにはむし歯がなくても、そこから歯がポキリと折れてしまうことも。「根面う蝕」は、せっかく残せていた歯を失いかねない怖いむし歯なのです。
●根面はなぜむし歯になりやすい?
歯の根面がむし歯になりやすい理由は、まず、根面の象牙質を覆うセメント質がごく薄いこと。歯の噛むところの場合、硬いエナメル質が鎧のように象牙質を覆っていますが、根面では、非常に薄いセメント質がコーティングしているだけです。
その厚さは薬用オブラートと同程度の20ミクロンほど。そのためセメント質は細菌の出す酸により簡単に溶かされてしまい、すぐに内部の象牙質がむき出しになってしまいます。
そして悪いことに、象牙質はエナメル質よりも酸に弱い性質があります。お口の中では、飲食ごとに、細菌が出す酸により歯の成分が唾液中に溶け出す(脱灰)のですが、象牙質はエナメル質より早く酸に溶け出します。その結果、歯の噛むところは無事でも、根面だけはむし歯になってしまうのです。人気。一方おやつはコーラ飲料や柑橘ジュースがどこでも手に入ります。
●歯肉、下がってきていませんか?
むし歯予防の基本は、歯ブラシでプラーク(細菌の塊)を除去すること。歯の根面をむし歯から予防するときも、それは変わりません。その際には、歯の修復(再石灰化)を促すフッ素入りの歯みがき剤や洗口液をぜひ利用しましょう。エナメル質のむし歯と同じように、根面の象牙質のむし歯予防にも、フッ素には一定の効果が認められています。
また、根面う蝕の大元の原因は「歯肉が下がる」ことですので、歯肉を下げる原因となる歯周病にも気をつけましょう。歯周病を予防するには、痛みや歯のぐらつきなどを感じる前から、歯科医院にメインテナンスに通って、検査してもらうことが大切です。歯周病も根面う蝕と同じく自覚症状なく進行するので、定期的な検査が欠かせません。歯肉が下がって根面が見え始めたら、「年だから仕方ない」で終わらせずに歯科医院へ。新しいお口の状況にあった予防の戦略を一緒に練り直しましょう。
シオノデンタルクリニック 歯のコラム 2018年5月掲載分